はじめに
長年治らない肝斑(かんぱん)に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。あなたがやっている肝斑治療、本当に大丈夫?浦和の美容皮膚科医が、肝斑改善に必要な4つの重要ポイントを徹底解説します。この4つを無視した治療を続けていても延々と肝斑が治らないかも?すでに肝斑治療をしている方は、今やっている治療が4つのうちのどこに当てはまるのか是非考えながら読み進めてみたください。このコラムがあなたの肝斑治療の助けになれば幸いです。
そもそも肝斑とは!?分かりづらい肝斑の特徴と原因
「肝斑」は、顔に現れる(多くの場合)左右対称の茶色い色素沈着のことを指します。主に頬骨のあたりに広がることが多く、こめかみ・額や口周りにも現れる場合があります。その見た目からシミと混同されやすいですが、肝斑は特有の原因や特徴を持つ別の肌トラブルです。
肝斑の主な特徴
- 左右対称に発生
頬骨の高い位置に広がることが多いのが特徴で、日焼けによるシミとは異なります。
この写真は典型的な肝斑です。頬骨が一番盛り上がった場所を中心に茶褐色の色素斑が広がっています。ほとんどの人はこの箇所に肝斑が最初にできます。なぜここにできるかというと、骨が出っ張っており毎日の洗顔やメイク、マスク着用の際に「一番摩擦を受けるから」です。また顔の中でも紫外線が当たりやすい箇所でもあります。
- ぼんやりとした境界線
シミよりも輪郭がぼやけた形で現れるのが特徴です。
下の写真は肝斑ではない普通のシミ(老人性色素斑、日光黒子)です。肝斑に比べて輪郭がはっきりしており、シミがある部分とない部分の境界線がはっきりしています。
- 30~50代の女性に多い
女性ホルモンが関係しているとされ、妊娠やピルの使用、閉経前後の時期に悪化することがあります。
肝斑の主な原因
肝斑の原因は一つではなく、複数の要因が重なり合っています。
- 摩擦や刺激
肌を頻繁に擦るなどの刺激が肝斑を悪化させる最大の要因です。洗顔時の強い摩擦や合わない化粧品の使用も原因となることがあります。
- 紫外線
日光による刺激も肝斑を悪化させる要因です。紫外線を浴びることでメラニンが過剰に生成され、肝斑が濃くなることがあります。
- ホルモンバランスの乱れ
妊娠、出産、ピルの使用、更年期など、女性ホルモンの影響が肝斑の発生や悪化に関与しているとされています。
- ストレスや生活習慣
睡眠不足やストレス、栄養バランスの偏りは、肌のターンオーバーを乱し、肝斑の原因につながることがあります。
シミ(老人性色素斑)と肝斑の違いとは?
肝斑とシミは似ていますが、原因や治療法が異なります。シミは主に紫外線が原因で発生しますが、肝斑は摩擦などの物理的刺激が大きく関わっています。また、肝斑は治療中の肌刺激に注意が必要で、間違ったケアをするとかえって悪化する可能性があります。
上記の写真の方は両頬に濃い肝斑がありますが、肝斑にしては少し違和感のある形をしています。頬骨が盛り上がっている部分より下にも濃い肝斑ができています。
写真の赤点線で囲った部分は白点線の部分に比べて摩擦の影響を受けにくい箇所になります。もちろん赤点線の箇所にも肝斑はでき得るのですが、その場合は顔全体が強い摩擦刺激に晒されているため、こめかみや目尻方向にももっと肝斑が広がっていることが多いのです。
私は不思議に思い、この方に肝斑ができた経緯を伺うと、「他院でレーザー治療をした後に肝斑が出てきた」とのことでした。これには納得です。レーザー治療は局所的に強い刺激が加わるため、本来出来にくい箇所に肝斑ができても何ら不思議ではありません。
自己判断での治療は絶対にやめよう!
ドラッグストアやネット上には市販のシミ取りクリームなどが多数販売されています。中には皮膚が剥けてしまうような強力な成分が含まれた製品も存在します。そんな製品を自己判断で使用していると悲惨な目に遭ってしまうこともあります。
この男性は市販の製品を使用して肝斑が悪化してしまった方です。
また肝斑は女性に多いですが、男性にもできます。女性に多い理由としては、女性ホルモンの影響以外に、「毎日化粧をする」ことが挙げられます。男性で化粧をする方は少数派なので肝斑ができている男性は少ないですが、肝斑がある男性に多い特徴として、誤ったスキンケアに熱心に行っているなどの「美意識の高い男性」が多い印象です。
前置きが長くなりましたが、これから肝斑治療に必要な4要素を解説していきます。
肝斑治療に大事な要素①メラニンの破壊
肝斑の主な原因の一つは、皮膚内に過剰に蓄積されたメラニン色素です。この過剰なメラニンを効果的に除去するためには、ピコトーニング治療が有効とされています。
ピコトーニング
施術について詳しく見る
ピコトーニングは、ピコ秒レーザーを用いてメラニンを細かく分解する治療法です。従来のレーザー治療と比較して、肌へのダメージが少なく、色素沈着のリスクを低減できます。特に肝斑のようなデリケートな色素沈着に対して効果的であり、定期的な施術により徐々に肌のトーンを均一に整えることが可能です。
ピコトーニングの効果を最大限に引き出すためには、専門医の診断と適切な施術計画が重要です。個々の肌状態に応じて、施術回数や間隔を調整することで、安全かつ効果的な治療が期待できます。
なぜシミ取りレーザーで悪化するのか?
トーニング以外のシミ取りレーザー(スポット照射のレーザー)でも「メラニンの破壊」は行われます。それなのになぜ肝斑は悪化するのでしょうか?その理由は刺激が強すぎて、破壊されたメラニン以上に新しいメラニンが産生されてしまうからです。また、QスイッチYAGレーザーを用いた「レーザートーニング」とピコレーザーを用いた「ピコトーニング」がよく比較されるのですが、ピコトーニングの方が組織へのダメージが少ないため(レーザーを照射することで)新たに産生されてしまうメラニンが少なく効率的にメラニンを破壊できます。QスイッチYAGレーザーではピコよりも刺激が強いため破壊したメラニン量と近いくらい新しいメラニンが産生されてしまうため治療効率が落ちてしまいます。
肝斑治療に大事な要素②メラニン産生の抑制
メラニンの過剰産生を抑えることは、肝斑の進行を防ぐ上で非常に重要です。内服薬や生活習慣の見直しを通じて、メラニン生成を効果的に抑制することが可能です。
トラネキサム酸の内服
トラネキサム酸は、メラニン産生を促進するプラスミンの働きを抑制することで、肝斑の改善に寄与します。内服による治療は、全身的に効果を発揮し、特に広範囲にわたる肝斑に対して有効とされています。服用期間や投与量は、医師の指導のもとで適切に管理することが重要です。
皮膚への刺激を減らす
日常生活における皮膚への刺激は、メラニン産生を促進し、肝斑を悪化させる要因となります。以下の点に注意することで、メラニン産生の抑制に繋がります:
- 擦らない:洗顔やスキンケアの際に、肌を強く擦ることは避けましょう。優しく扱うことで、刺激を最小限に抑えます。
- 日焼け対策:紫外線はメラニン産生を促進します。日焼け止めの使用や帽子、日傘の活用などで、紫外線から肌を守りましょう。
- 適切なスキンケア:アルコールや香料が含まれる刺激の強い化粧品は避け、敏感肌用の低刺激性製品を選ぶことをおすすめします。
これらの対策を日常生活に取り入れることで、肝斑の予防と改善に大きく寄与します。
肝斑治療に大事な要素③メラニン排出の促進
既に生成されたメラニンを効果的に排出することで、肝斑の改善を促進します。肌のターンオーバーを正常化させることが鍵となります。また、要素①のピコトーニングを行うとメラニンの破壊は瞬時に起こりますが、破壊されたメラニンは破壊された状態で数ヶ月皮膚内に留まりますので、ターンオーバーを早めることで、破壊されたメラニンの排出が進みピコトーニングの効果を早く実感できるようになります。
ピーリング
ケミカルピーリングは、酸性の薬剤を用いて古い角質を除去し、肌の再生を促す治療法です。これにより、メラニンを含む角質が排出され、肌の明るさが増します。定期的な施術により、ターンオーバーの正常化が期待できます。
レチノールの使用
レチノール(ビタミンA誘導体)は、細胞の増殖を促進し、ターンオーバーを活性化させます。夜間のスキンケアに取り入れることで、メラニンの排出を助け、肝斑の改善に効果を発揮します。使用開始時には、肌が敏感になる場合があるため、低濃度から始め、徐々に適応させることが推奨されます。
これらの方法を組み合わせることで、メラニンの排出を効果的に促進し、肝斑の改善を目指すことが可能です。
肝斑治療に大事な要素④真皮層の健全化
肝斑のある方の肌では、表皮だけでなく「真皮層の弾性繊維の変性(光線弾性繊維変性)」が起こっています。これは、紫外線や摩擦などの刺激により、真皮のコラーゲンやエラスチンがダメージを受けて劣化し、肌の土台が弱くなっている状態です。真皮層が健全でないと、メラニンが表皮に蓄積しやすくなり、肝斑の再発を招くことになります。そのため、真皮層のケアが肝斑治療において非常に重要です。
ピコフラクショナルレーザーによる真皮層の再生
ピコフラクショナルレーザーは、肌の奥深くまで作用し、コラーゲンの再構築を促す治療法です。真皮層に微細な穴を開けることでリモデリング(再構築)が行われ、肌の弾力を改善し、肌の基盤を強化します。これにより、以下の効果が期待できます。
- 肌のハリや弾力が向上し、メラニンの沈着を防ぐ
- 血流が促進され、肌のターンオーバーが改善
- 真皮層の健康が保たれ、肝斑の再発防止につながる
ピコフラクショナルはダウンタイムが少なく、治療後の赤みも数日程度で引くため、忙しい方でも継続しやすい治療です。
RF(高周波)治療によるコラーゲンの活性化
RF治療は、肌の深部に熱エネルギーを与え、コラーゲンの生成を促進し真皮層を再構築する治療法です。加齢や紫外線ダメージによって衰えた肌の土台を強化し、肝斑が悪化しにくい肌環境を作ることができます。ピコフラクショナルレーザーと似たような効果が期待できます。